難航する中学部活動の「地域移行」改革 “激減”危機のさなか…前進に必要な一枚岩

公開日:2023.12.11

更新日:2023.12.26

文:内田勝治 / Katsuharu Uchida

XFacebookLineHatena

なかなか前に進めない“現場の改革”「地域格差がとにかくあります」

 教員の長時間労働問題などを背景に、公立中学校の部活動を地域のクラブや民間事業者などに委ねる「地域移行」が2023年度からスタートし、間もなく1年を迎える。国は2025年度までの3年間を「推進期間」と位置づけ、早期実現を目指す方針を打ち出しているが、現場では改革は進んでいるのだろうか。日本中学校体育連盟(中体連)軟式野球競技部長の土屋好史さん(高崎市立群馬中央中教員)は「進めなくてはいけないと自覚しながらも、前に進めていないというのが現状です」と話す。

「全国的に見させていただいて、地域格差がとにかくあります。過疎化が進み部活動の存続が危ぶまれている地区では、自治体が主導となって積極的に移行を進めている地区もありますが、都市部はどうかというと、(部活動の)絶対数が多いので、地域の受け皿があるのかという問題があります」

 中体連が今年10月に公表した部活動調査によると、男子の軟式野球は加盟校数が7808校で、加盟生徒数は12万9454人。2013年は加盟校数が8795校、加盟生徒数が24万3664人だったことを鑑みると、わずか10年でその数は激減した。

 地域移行により、外部指導者や部活動指導員がいなければ、部活動としての存続が危うくなるが、そういった人材を確保するのは簡単ではない。自分が入学する中学校に部活動がなく、クラブチームに入ろうにも経済的負担が大きいとなれば、家庭の事情で野球をあきらめる生徒も出てくるだろう。

高崎中央ボーイズ・倉俣監督は「野球人口を“微減”に抑えられるアイデアを」

読売巨人軍の野球振興部長を務める高崎中央ボーイズの倉俣徹監督【写真:高橋幸司】

 中学硬式野球の強豪「高崎中央ボーイズ」の倉俣徹監督も、地域移行の導入に危機感を感じている一人だ。倉俣監督は現在、読売巨人軍の野球振興部長を務めており、プロ側と中学野球の置かれている現状について意見交換することも多い。

「野球人口を“半減”ではなく“微減”に抑えられるようなアイデアを出していかないといけない。プロ経験者も、外部指導者としてどんどん教えていってほしい。今後、12球団がいろいろな形で支援していく流れになっていくと思います」

 その「アイデア」の1つは、すでに形となって現れている。昨年、倉俣監督が土屋さんに提案し、高崎中央ボーイズと群馬県選抜軟式チーム「群馬ダイヤモンドペガサスジュニア」が交流試合を行った。全国的に見ても例がない、“硬式対軟式”の一戦は、守備チームが普段使用している球でプレーする“特別ルール”を採用。同じ中学野球ながら、普段交流のない団体同士の試合は話題を呼んだ。今年も11月25日に2試合が行われ、大いに盛り上がった。

「こういった交流が全国的に広まっていくと、流れも変わってきます。JFA(日本サッカー協会)のような縦のつながりのように、野球という競技が(組織的に)一直線になるのが最終的には理想。学童や未就学児からしっかりとやっていけるような構図にしていくべきだと思います」(土屋さん)

 今夏には中学硬式野球5団体(リトルシニア、ボーイズ、ポニー、ヤング、フレッシュ)の夏王者が頂点を競う「1stエイジェックカップ」が初開催。団体の垣根は、少しずつではあるが、取り払われようとしている。中体連を含めた各団体が一枚岩となり、野球少年の未来を守る必要がある。

トレンドワード