
東京・足立区「西伊興若潮ジュニア」は怒る指導と保護者の当番廃止
怒る指導を禁止し、選手を褒めて伸ばす方針に転換してからメンバーが一気に増えた東京・足立区の少年野球チーム「西伊興若潮ジュニア」では、保護者の当番制も廃止した。チームの代表を務める山崎伸さんは「お母さんたちはウエイトレスやお手伝いさんではありません」と話す。
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4年ほど前、西伊興若潮ジュニアは怒声罵声を全面的に禁止した。山崎伸さんが「子どもたちが怒鳴られる姿は見たくない。監督やコーチの意識を徹底しなければ、怒鳴る指導はなくならない」と決意したのだ。
同じ時期に、チームは保護者の当番制も廃止した。それまではチーム用のお茶、指導者の弁当やコーヒーを準備する当番があった。保護者に練習の送迎を求める指導者もいたという。山崎さんは「少年野球では長年当たり前のようになっていますが、お母さんたちはウエイトレスやお手伝いさんではありません」と話す。
チームでは現在、保護者にお願いしている役割はない。監督やコーチ、練習の補助は主に選手の父親が担当しているが、一切強制はしていないという。中には、野球未経験ながら子どもと一緒に野球を学びたくてコーチをしている父親もいる。
総監督の中村勝哉さんは「怒る指導をやめてから選手の数は増えましたし、子どもたちは楽しそうに野球をするようになりました。楽しそうな子どもたちを見て、大人が自然に動いているんだと思います」と語る。
試合中の飲み物提供に集中する姿に違和感…保護者も楽しめるチームに
中村さんは、選手の母親たちによる当番制廃止を強く訴えていた1人だ。試合や練習の合間にチームスタッフにお茶やコーヒーを出す母親たちに、ずっと疑問を抱いていたという。
「お母さんたちは飲み物を出すことに集中してしまいます。スタッフは普段、飲み物を自分で買うのに、野球の時だけ出してもらうことに違和感がありました。せっかく試合に来たのであれば、子どもたちを見てほしいですし、応援してほしいです」
山崎さんも中村さんもチームを運営する立場としては、保護者の手は多い方が助かる面はある。ただ、仕事や他のきょうだいの育児など、それぞれの家庭で事情が異なるため、当番制に否定的な立場を取る。
「お母さんたちは可能な範囲でグラウンドに来て、子どもを大きな声で応援してもらえれば十分です」と中村さん。山崎さんは「保護者が子どもたちと関われるのは少年野球までだと思います。この時間を一緒に過ごして、保護者も楽しんでもらいたいです」と力を込める。
保護者に特別な役目は必要ない。まして、子どもよりも監督やコーチへの配慮を優先させる理由はない。少年野球の主役は誰なのか、決して見失ってはならない。
(間淳 / Jun Aida)