指導者嘆き「レベル下がってる」 5000チーム激減…少年野球界、“地盤沈下”の要因

文:大久保克哉 / Katsuya Okubo

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「万能タイプ」の選手数も全国大会の本塁打も減少…夏の学童大会は“二極化”

「レベルが下がっている」「フライを捕れない新入生がゴロゴロいる」……。

 中学野球の指導者から、このような声が聞かれるようになっている。軟式野球部の教員だけではない。関東地区で学童チームを視察していた、硬式クラブの監督もこう嘆いた。

「野球の通知表で言うと『オール4』の子が極端に減りましたね。ひと昔前は『オール4』が当たり前という感じだったのが、今は全体的にレベルが落ちている。打てても足が遅い、球は速いけど投手以外できない子も目立ちます」

 小学生のレベルの低下は、現場取材でも感じられる。筆者はこの2023年も、夏の伝統の全国大会「全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント(全日本学童)」を筆頭に、その都道県予選や市区町村単位の大会、ローカル大会から秋の新人戦の都道府県大会まで足を運んできた。

 夏の全日本学童では、二極化とスケールダウンが否めなかった。「オール5」の選手がひと握りなのは以前と同じで、今年は超異例の124キロを投じたスーパー左腕が出現した。その一方、全50試合で本塁打は29本(前年43本)、完投した投手は2人(前年7人)と、数を大きく減らしている。

 47都道府県で同様の予選を経た全国大会は、全日本軟式野球連盟(JSBB)主催の全日本学童のみだが、「全国」と名のつく主要な大会は大阪・新家スターズがほぼ独り勝ち。危うい展開がまるでないままの“年3冠”達成だった。同チームは怪物級の選手がいたわけではないが、攻守走のどれも穴がなく、戦術面でも太刀打ちできる対戦相手がいなかった。

指導者資格を新年度から義務化…改善の鍵は野球人の「情熱と行動力」

野球界を好転させるべくJSBBでも施策を講じる。写真は吉岡大輔事務局長【写真提供:フィールドフォース】

 レベルの低下、その要因は複数あるだろう。コロナ禍での活動自粛が影を落としてきた、との指摘も複数。このあたりを見極めるにも、あと数年は経過をみる必要がありそうだ。

 ショッキングな背景としてあるのは、この15年で約5000の学童チームが消滅している(JSBB登録)という事実だ。数が減れば競争力が弱まり、競争力が落ちれば質も下がるのは必然か。全体を下支えする最大のカテゴリーが急速にしぼんできたことで、地盤沈下がすでに始まっているのかもしれない。

 これは球界全体の問題。JSBBだけに責任があるわけではないが、無策でもない。この12月20日には、1本約5万円のものある一般用の複合型バット(打球部に弾性体の別素材)の使用を、2025年度から禁じる発表をした。「安全面の考慮」が理由だが、富や道具の優劣による競技格差も埋まり、技術が底上げされてくる可能性もあるだろう。また、来たる2024年度からは、指導者の資格取得を義務化。JSBB認定の資格者不在のチームは、大会に参加できなくなる。

 時代は世間でも野球界でも、人間性やモラルが問われている。旧態依然のスパルタ指導やマンネリ練習、無計画・非効率で結果も伴わない長時間の拘束、「楽しい」と「自由」を履き違えた育成の放棄。こういうチームは自ずと淘汰されるだろうが、指導資格制度の本格導入でさらに拍車がかかりそうだ。

 筆者は上位資格(JSPO公認コーチ3)を取得中。3万円以上の出費だが、新たな学びや更新・整理された知識も多々ある。事前課題のクリアと実技やディスカッションを含む講習会を加えると、要した時間は100時間をくだらない。

 それでも新たに学びに来ている受講者たちからも、冒頭のような「レベルの低下」が聞かれた。しかし、嘆きで終わらずに自分を磨いて何とかしよう、という情熱と行動力がある。球界を真に変え、支えていくのはこういう野球人たちではないだろうか。

大久保克哉(おおくぼ・かつや)1971年生まれ、千葉県出身。東洋大卒業後に地方紙記者やフリーライターを経て、ベースボール・マガジン社の「週刊ベースボール」で千葉ロッテと大学野球を担当。小・中の軟式野球専門誌「ヒットエンドラン」、「ランニング・マガジン」で編集長。現在は野球用具メーカー、フィールドフォース社の「学童野球メディア」(https://www.fieldforce-ec.jp/pages/know)にて編集・執筆中