子どもたちに言ってはいけないNGワード 全国制覇3度の名将が語る指導者の役目とは

指導者へ向けたFirst-Pitch連載「ひきだすヒミツ」、京葉ボーイズ・関口勝己さん

 千葉にある京葉ボーイズの関口勝己監督はチームを3度も全国大会優勝に導き、プロ野球選手も育てた。関口監督が少年野球指導のヒントになる考え方を紹介する。3回目のテーマは「指導者の在り方」。実際に手本を見せられることの意味、子どもたちに言ってはいけないNGワードについて、考えていきたい。

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 子どもたちに感覚的なことを教えるのは難しいですよね。指導者と子どもたちの感覚は違うわけですから。多くの指導者が直面している悩みだと思います。そんな時は言葉で伝えるのではなく、子どもたちに実際にやらせて感覚をつかんでもらう練習法があります。

 例えばバットを振る時に「体重移動して軸足から踏み込んだ足に支点を移す」と指導しても、子どもたちには分かりにくいですよね。そこで25度の角度をつけた台に軸足を乗せてスイングさせると、反対側の足に支点が移動する感覚が分かります。投球であれば「ボールはゼロポジションでリリースしなさい。ゼロポジションというのは肩から肘や指先まで一直線になるところ」と口で説明しても、なかなか伝わりません。そういう時は、バスケットボールやバレーボールを頭の後ろから両手で投げさせます。ボールを離した位置がゼロポジションになるので、体を動かして覚えてもらうんです。

 他にも、バットのヘッドが走る感覚をつかむために竹竿を振らせたり、ボールをコントロールする時の指先の感覚を覚えるために、10メートル離れたカゴに放物線を描くようにボールを投げ入れさせたりしています。繰り返すと体に正しい動きや感覚が身に付きます。指導者が最も口にしてはいけないのは「何でできないんだ」という言葉です。選手がうまくできないのは監督やコーチの指導力が不足しているからで、選手のせいではありません。できないことをできるようにするのが、指導者の役目です。

 指導する上で、もう1つ大切なのは手本を見せることです。指導者自身ができないことを子どもたちに教えても、説得力がありません。中学生くらいになると大人への反発心が芽生えてくるので、上から目線で指導すると「あなたは、できるんですか」と感じます。そこで、私は打つ、投げる、捕る動きを実際に見せます。子どもたちに「監督は、ちゃんとできるんだ」と思わせたら勝ちです。指導を素直に聞くようになるはずです。そのためにも、指導者は体を鍛えて、動けるようにしてください。私は自分が手本を見せられなくなった時が、指導者を辞める時だと思っています。

 工夫した練習や伝え方も、手本を示すことも、どれだけ愛情と情熱を持って子どもたちと向き合えるかということです。指導者の気持ちは必ず子どもたちに伝わって、上達していく楽しみを感じられます。

○プロフィール
関口勝己(せきぐち・かつみ) 1965年4月13日生まれ、栃木県出身。小山高、明治大を経て1988年NTTに入社。NTT関東(現NTT東日本)野球部では95年までの現役9年間で都市対抗野球大会に6回出場、2003年から08年までNTT東日本でコーチを務め、09年から京葉ボーイズの指導にあたる。これまでにボーイズ全国大会3度優勝、19年には春、夏連覇を果たした。

(石川哲也/Tetsuya Ishikawa)

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