9割弱は即引退…高3球児にもっと実戦の場を 北の大地に設える、最後の夏の“延長戦”
甲子園出場を逃した高校3年生対象…北海道で個人参加型「リーガサマーキャンプ」開催
高校3年の球児たちの現役生活は今年、夏の大会で終わるとは限らない。「一般社団法人Japan Baseball Innovation」(以下JBI)は8月9日から17日まで、都道府県大会で敗退し甲子園出場を逃した高校3年生を対象に、北海道で個人参加型のリーグ戦を開催する。その名は「Liga Summer Camp(リーガサマーキャンプ) 2024 in 北海道」。最終戦はプロ野球・日本ハムの本拠地エスコンフィールド北海道で行われることが決まっており、画期的な取り組みとなりそうだ。
高校野球に3年間打ち込んできた球児たちにとって、最後の夏はたいてい、あっけないほど短い。JBIの阪長友仁代表理事は「夏の都道府県大会の1回戦で半数、3回戦以内に87.5%が敗退し、7月中旬に引退を余儀なくされます。果たして実戦の場は足りているのでしょうか。甲子園に出られれば、経験値は上がるでしょう。しかし敗退してしまった高校3年生にも、個人参加で集まれる場所があればいいのにと考えたことが、このサマーキャンプを企画したきっかけです」と説明する。
強豪校でレギュラーとして活躍したものの甲子園出場を逃した選手、3年間出場機会自体に恵まれなかった選手の中には、さらに技術レベルを向上させたい、自分の本当の実力を知りたい、できれば大学やプロにアピールして進路を切り開きたいと考えている人も多い。同サマーキャンプに参加すれば、これまで出会ったことのない地域の選手たちと交流することもできる。
4月中に募集を始め、約80人(20人×4チーム)の選手の参加を想定。8月9日から17日までの間に6〜8試合を行う予定だ。会場は栗山町民球場をメーンとし、最終日の17日はエスコンフィールドを使用する。宿泊費、食費、移動費、ユニホーム代などとして、1人約25万円の参加費が必要になると見込まれており、集合場所の札幌までの往復交通費も自己負担となる。今後、企業や個人からの寄付を呼びかけ、大会運営に充てていく予定だ。
「人間的成長を促したい」と現地では農業・酪農体験も企画
同サマーキャンプは、灼熱の甲子園で全国大会が行われている最中の時期に、涼しい北海道で開かれることになるが、それでも「気候や選手たちの体調を見ながら、たとえば日によって7イニングにするなど、柔軟に対応していきたい」と阪長代表理事は言う。また、「野球に打ち込んでいる選手は、高校生活がほぼ野球だけになってしまいがちなので、視野を広げ、人間的成長を促したい」との考えから、現地で農業や酪農を体験できる機会を設ける予定で、調整中だという。
阪長代表理事自身は1981年生まれで、新潟明訓高3年時に夏の甲子園に出場。立大野球部では主将を務めた。卒業後、青年海外協力隊の一員として中南米で野球指導に当たり、強豪国のドミニカ共和国の育成システムに触れた経験を基に、帰国後の2015年に高校野球のリーグ戦「Liga Agresiva(リーガ・アグレシーバ)」を立ち上げた。
リーガ・アグレシーバは当初、大阪府立高校6校で発足したが、年々参加校が増え、今年は34都道府県の175校が参加する予定だ。昨年は参加校のうち4校が夏の甲子園にも出場し、慶応高(神奈川)は全国制覇、おかやま山陽高(岡山)はベスト8入りを果たした。「高校野球と言えば、負けたら終わりのトーナメント戦だけれど、負けても次があるリーグ戦を行い、勝っても負けても、しっかりと振り返りをして次の試合に向かう機会があってもいいのではないか」(阪長代表理事)との考えが根底にある。
かつてプロ野球界で名将と呼ばれた故・野村克也氏は「先入観は罪、固定観念は悪」という名言を残した。「高3の夏の大会に敗れたら即野球部引退」も、「高校野球はトーナメント」も、固定観念かもしれない。阪長代表理事らが吹かせる新風は心地よい。
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