劣る子でも「来るもの拒まずは残酷」 信念曲げず20年…猛批判食らった“入団テスト”

公開日:2023.12.30

更新日:2024.01.04

文:木村竜也 / Tatsuya Kimura

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東海地方屈指の強豪「愛知尾州ボーイズ」藤川正樹監督の指導論

 中学野球に入団テストは必要だろうか――。小学6年生をふるいにかけるのはまだ早いという否定的な意見も聞こえてくるが、すでに行っているチームが増えてきていることも事実。東海地区屈指の強豪「愛知尾州ボーイズ」の藤川正樹監督は、賛否両論を全て受け止め、あえて実施してきた。監督歴20年。そこには揺るがぬ信念があった。

 愛知尾州ボーイズは、11月に行われたボーイズリーグの春季全国大会愛知西支部予選で優勝し、4年連続で全国大会出場を決めた。名古屋市近郊の野球少年・少女にとっては目指すチームのひとつであり、3年間所属した中学生の多くは名門高校へと進学していく。しかし、当初から強いわけではなかった。藤川監督が2004年に就任した当時は、いわゆる“弱小チーム“だった。

 グラウンドでは、技術も目標もバラバラな選手たちが一緒に練習していた。個々の成長スピードも異なるため、1年生と3年生ではかなりの体格差も。そんな中、入団テストの実施を決意させる出来事が起きる。

「入団したものの、先輩から『グラウンド整備しろよ』と言われて怯えちゃった子がいたんです。その後、トラウマになって駐車場からグラウンドまで来られなくなってしまって……」

 上級生にとっては、悪気のない指示のひとつだったのかもしれない。しかし、下級生から見た先輩は、精神的にも身体的にも大人に見えるもの。技術的にも差があればなおさらだ。区別する弊害はあるが、何でもかんでも一緒くたにすることが正解ではないはず。せっかく好きで始めた野球を嫌いになってほしくないという思いで、決断した。

「(入団テストをして希望者が)来なかったらしょうがないって気持ちでしたね。それよりも、ついていけなかったり、試合に出られなかったりしたら、野球が嫌いになってしまう。私は昔のような根性だけの指導はしないので」

選手の未来を見据え…最終的には「その子のためだ」と心を鬼に

 2005年から入団テストを開始したが、当時は珍しい試みだった。勉学の中学受験ならまだしも、地域のいちクラブチーム。当然、周囲から猛批判を食らった。

「ボーイズリーグの方から、ものすごく反発されたんです。『何がセレクションだ!』って。近所の子を落とすこともありましたし。そしたら私はやり玉でしたね。あの若僧がってね。その度に説明して……」

 わざわざ希望してきた子を断る心苦しさはある。それでも、最終的にはその子のためだと心を鬼にした。「断る時は親御さんを呼んで、『今はまだこのレベルじゃない。ここでやらせちゃうと、レベルの差から悩みを抱えすぎて、中学校にも行けなくなってしまうかもしれないよ。だったら仲間たちと同じ中学の野球部でやらせてあげた方がいいかもしれないですよ』って説明をします」。ただの足切りではないと、何度も何度も説いた。

「来るもの拒まず、は残酷なんです」。レベルに差がありすぎては、本人のためにもならない。指導者ならその先の未来を想像して、導いてあげなければいけない。将来の伸び代は誰にでもある。たとえ周りと比べて技術が劣っていたとしても「今が勝負じゃない」と言葉を投げかける。焦りから野球を嫌いになってしまうことだけは避けてほしかった。

 入団テストが周囲の理解を得られるまで、7年かかった。多くの批判を受けても、説明に時間を割き、曲げなかった信念。「最初は1回戦も勝てないチームでしたけど、ここまでみんなとやってこられたのは僕の財産です」。未来のために思い切った取り組みを始めた壮年監督は、61歳になった。柔和な表情に刻まれたしわは、子どもたちの笑顔の分だけ深くなっていく。

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