野球をする子どもたちが一度は抱える、「バットにボールが当たらない」という悩み。指導者が解決に導くためには、スイング軌道のアドバイスが重要になります。その基本が「レベルスイング」です。
ただ、レベルスイングの意味を誤って認識していたり、間違った形で身に付けていたりする選手も意外と多く、逆に打てない原因になることも。正しく教えるには、“専門家”の意見を取り入れることが重要です。ここでは、米国で野球の指導方法を学んだ野球スキルコーチの菊池タクトさんが、「本当のレベルスイング」のコツや独自の練習法を紹介します。
目次
専門家プロフィール
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○菊池タクト(きくち・たくと)本名・菊池拓斗。1993年1月16日生まれ、福島県矢吹町出身。小学3年生で野球を始める。福島・光南高では1年夏からベンチ入り、秋から捕手でレギュラー。富士大では捕手と一塁手。高校の教員を経て、25歳の時にコーチングを学ぶために米国留学。現在は野球教室やYouTubeなどで知識や技術を伝え、少年野球の子どもや指導者から好評を集めている。First-Pitchと連動している野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT(ターニングポイント)」でも、育成年代の野球指導に向けたトレーニング方法や理論を解説。
1. レベルスイングとは
バットのスイング軌道は大きく3種類に分けられます。
◆ダウンスイング
◆レベルスイング
◆アッパースイング
ダウンスイングは、ボールの軌道に対して斜め上から下方向にバットを出します。一方、アッパースイングは、斜め下から上方向に出す形になります。それに対してレベルスイングは、投手が投げたボールの軌道と、バットのスイング軌道が一直線になるスイングです。
2.レベルスイングのメリット
そもそもレベルスイングとは何かということをお伝えしたところで、レベルスイングにどんなメリットがあるのかを大きく4つに分けて紹介します。
ボールを捉えられる確率が高くなる
ダウンスイングやアッパースイングは、ボールを“点”で捉えるのに対し、レベルスイングは“線”で捉えるイメージのため、バットに当てやすくなります。ミートポイントの幅が広がるので、空振り数が減り、ボールをカットすることができたり、芯で捉えられるスイングになったりします。
強いライナー性の当たりが打てる
投手が投げたボールの軌道とスイングの軌道が一直線に衝突する形になるため、バットに当たる時に力が伝わりやすくなります。そのため強いライナー性の打球が生まれます。
変化球に対応しやすい
投球の軌道にスイングを合わせるため、変化球に対応しやすいです。ムービングやツーシームなど、一見すると直球のような細かい変化をするボールも増えているので、ミートポイントの幅が広がるレベルスイングは有効となります。
下半身と連動したフォームになる
スイング時に体が回転する際、ダウンスイングでは斜め下方向に、アッパースイングでは斜め上方向に上半身が傾いて角度ができるので、上半身だけで振ってしまうことも。しかしレベルスイングでは、無理に上半身に角度がつかないため、下半身とスムーズに連動したバッティングフォームになります。
3.レベルスイングのデメリット
一方、レベルスイングのデメリットは少ないと言われています。アッパースイングやダウンスイングと比べあえて挙げるとすれば……というデメリット3点を紹介します。
飛距離が出にくい
バットがボールの下に入るアッパースイングと比べて、レベルスイングはボールを面で捉えるイメージのため、打球が上がりにくく、飛距離も劣ります。
同じスイング軌道を維持するのが難しい
「バッティングは水モノ」とよく言いますが、スイングやバッティングの感覚は日によって変化するので同じ軌道を維持するのは難しいです。
習得するのが難しい
下半身も連動させた動きとなるため、腕と足腰の筋力も重要となります。その他にもスイングの感覚は日々変わるため、全体的に習得難易度が高いと言われています。
4.レベルスイングのミート率を高めるコツ
一般的に、地面と平行にバットを振るのが「レベルスイング」と“誤解”されがちです。しかし、傾斜のあるマウンドから投げられたボールには当然、角度がついています。そのボールの軌道に合わせ、バットのラインと左右の肩をつないだラインを平行にすることこそが「本来のレベルスイング」で、上体を前傾させてバットを振ります。肩を下げてグリップをヘッドよりも上にしてスイングすると、バットの芯は上に向くので打球がライナーになります。
正しい軌道でバットが出るようになると、自然とボールに当てられるミート率は高まってきます。
5.プロが伝授する“本来のレベルスイング”の練習法
ここまでお伝えしてきたレベルスイングの基本的なメリットやコツを踏まえ、米国で野球の指導方法を学んだ菊池さんによる“本来のレベルスイング”の練習法を紹介していきます。
右腕と左腕を分けて行うドリル
右腕と左腕、それぞれ動きに分割してスイングの軌道を身に付けるメニューです。分割したドリルを繰り返すと、バットの芯でボールを長くとらえる“理想の軌道”が身に付くといいます。各メニューは以下の通りです。
メニュー①前の手ヒッティング
グリップの上の部分を左手(左打者なら右手)で持ち、片手でティースタンドに置いたボールを打ちます。足はステップはせず、肩幅より少し広めに開きます。バットは振りきらず、ボールに当たったらスイングを止めます。重要なポイントは、スイングした後にグリップがヘッドよりも上に来るようにバットを振ることです。
メニュー②後ろ手ヒッティング
右手(左打者なら左手)でバットを短く持ち、ステップせずに振ります。バットは振りきらず、グリップは上向きで、腕は肩と同じ高さまで上げます。ポイントは、打球の強さよりも方向を意識することです。センターに打球が飛ぶ確率が上がってくると、正しいスイング軌道が身に付いている目安になります。
8球を2セット×1か月で効果実感
どちらの練習も、まず動きをイメージしてから実際にボールを打つことを勧めています。一連の動きを覚えてきたら、スイングスピードを上げても形が維持できているか確認してみましょう。菊池さんは前の手と後ろの手、それぞれ8球を2セット、1か月続けると感覚がつかめてくると話します。その後は両手でバットを持って、スイングの形を固めていきます。
6,レベルスイングのまとめ
小学生から中学生、高校とカテゴリーが上がるほど球速が上がり変化球への対応も求められるだけに、打撃の基本となるだけにスイング軌道は早い段階で選手に身につけさせてあげたい技術です。仮に、選手が初心者であっても、正しく効果的なトレーニングを伝えてあげれば、大きな成長を導くことができます。
菊池さんも出演している野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT(ターニングポイント)」では、最先端の理論などをもとにした練習ドリルやトレーニングメニューが公開されています。無料で200本以上の動画が見放題。野球指導の“サポート”をしてくれるので、少年野球の指導者・保護者はぜひ一度目を通してみてください!
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