なぜ怒声罵声がなくならない? スポ根卒業で2度の全国制覇…少年野球監督が分析

公開日:2022.07.01

更新日:2023.11.10

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多賀少年野球クラブの指導方針は楽しさと強さの両立「勝利理想主義」

 野球人口の減少に歯止めがかからない。子どもたちや保護者が野球を敬遠する理由の1つに挙げるのが、指導者や一部の保護者による怒声罵声だ。楽しさと強さの両立「勝利理想主義」を掲げる小学生軟式野球チーム「多賀少年野球クラブ」の辻正人監督の連載第6回のテーマは「怒声罵声がなくならない理由」。辻監督は“脱スポ根”にチーム方針を転換してから、メンバーが劇的に増えたと話す。

 滋賀・多賀町にある「多賀少年野球クラブ」は2018、2019年に全国制覇を果たしている。辻監督が掲げるチーム方針は「世界一楽しく!世界一強く!」。選手の考える力を育て、自主的に練習する工夫を凝らしている。いまだに怒声罵声で選手を育てようとする一部の指導者に、辻監督は苦言を呈す。

「大きな声で選手を叱って選手が上手くなるなら、私もやります。そうではないなら、エネルギーの無駄です。伝え方や練習内容を考えて指導すべきです。私たちのチームの指導者が声を張り上げるのは、子どもたちに気分良く野球をやってもらいたい時です。社会人になって、先輩や上司から大きな声で叱られたら、仕事がはかどりますか? はかどらない、逆効果と思うのであれば、子どもに対して大きい声を出すのはやめた方が良いと思います。時々、叱ると怒るは違うと言う人がいますが、受け取る側にとっては同じです」

 ここ10年ほどで、野球人口は大幅に減っている。暴言を吐いたり、怒鳴ったりする野球へのマイナスイメージが、競技人口減少の一因になっているとの指摘もある。指導者に対する社会の目が厳しくなっているにもかかわらず、なぜ暴言や怒声罵声はなくならないのだろうか。

「指導者に成功体験があるからだと思います。数パーセント、100人に1人か2人くらいの割合かもしれませんが、怒声罵声によって成長した子どもがいる可能性があります。わずか数パーセントの成功が忘れられない。全て失敗であれば、指導者を辞めるか、指導方法を変えるはずです。もしくは、自分が怒声罵声の環境で育って、社会人として立派になった成功例と考えているかだと思います」

スパルタのような指導を2017年に全面的禁止→18、19年に全国制覇

 今年54歳になった辻監督は、怒声罵声や根性論が一般的だった時代に高校生まで野球を続けた。20歳で現在のチームを立ち上げた当初は、自ら大きな声を張り上げて厳しく選手を指導する時期が長くあったという。気合いや根性、スパルタのような指導を全面的に禁止にしたのは2017年。指導方針を変えてから、チームの入団希望者が大幅に増えた。

「20年以上前から毎年のように全国大会に出続けていますが、当時は選手が各学年に5人ずつくらいでした。今は、園児から小学6年生まで合わせて80人近くなりました。メンバーが増えたのは、スポ根を卒業してからです。全国大会で勝てるチームだから人が集まっているわけではありません。実際、体験や入団してから日本一になったチームだと知る親子も多いです」

 昭和と令和では、保護者が少年野球チームに求める役割は変化している。少子化や働き方改革で子育てにかける時間が以前より増えており、辻監督は少年野球の指導も時代のニーズに合わせる必要があると力を込める。

「昔は仕事や他の兄弟の世話で忙しい家庭が子どもを野球チームに預けて、礼儀や技術をビシビシ指導してほしいと考えていたと思います。ただ、今の保護者は幼児や小学校低学年の子どもを野球チームに入れる時、昔ながらの指導や強さを基準にして選びません。いくつものチームを体験して、子どもを楽しませるだけではなく育成力のあるチームを見極めます。私も以前やっていた罵声を浴びせて、子どもたちに『なにくそ!』と思わせる指導は今では求められなくなったと実感しています。目指しているのは勝利理想主義です」

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(間淳 / Jun Aida)